若者の音楽のこと。 一般的な音楽用語としての「ロック」は、主に精神的価値観を定義の軸に据えるが、津軽三味線の世界においてはギター・ベース・ドラムスのいずれかが入っただけですべて「ロック」と呼ぶ。難しいことを考えなくても、普段やっている民謡にギター・ベース・ドラムスを合わせればそれだけで「ロック」である。 また、「ロック」は時に形容詞ともなり、「若者らしい、かっこいい」という意味を持つ。長唄三味線奏者「六九家宏光」、箏曲「ROCK段」、そして「ロックソーラン節」などが実在し、若者への必死のアプローチを続けている。 結局のところ、民謡と三味線の世界における「ロック」とは、洋楽に対する劣等感の結晶なのである。民謡が「ダサい音楽」「老人の音楽」であるならば、その対極に存在するのが、「カッコいい音楽」そして「若者の音楽」たるロックなのだ。やたらと「ロック」を標榜する奏者は、要するに民謡や三味線を「ダサい」と思っていることになるわけで、これはあながち間違いでもあるまい。 ロック好きの方々は、まず民謡界におけるロックの定義をしっかりと理解しておくことをお勧めする。『六三四』など、本来的な意味での和楽器ロックを実践しているグループは極めて稀であり、「ロック」を冠する民謡・邦楽関係者の楽曲にはあまり期待しない方が良い。 21世紀に入ってからは、ロックに代わり「トランス」が幅を利かせているようだが、ロックと同じく、劣等感の上に成立したものであることに変わりはない。
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