現在、年間に5回の津軽三味線競技大会が開催されている。古い順に、青森県弘前市の「津軽三味線全国大会」(5月)、青森県金木町の「津軽三味線全日本金木大会」(5月)、東京の「津軽三味線コンクール全国大会」(4月)、大阪の「全国津軽三味線コンクール大阪大会」(12月)、神戸の「津軽三味線全国大会 in KOBE」(10月)である。いずれも主催が異なり、それぞれの独自性をもって賞を設定している。 位置づけはおおむね他の楽器の大会と相違なく、若い奏者、とりわけプロを目指す20代の人々の登竜門となっている。第一線で活躍する若手プロのほとんどが大会優勝、または準優勝を経ており、今後もその位置づけは変わらないだろう。 しかし、すべての大会が審査基準や採点方法についてほとんど明かしていない上、審査基準が毎年変更されて出場者に混乱をきたす大会すらある。また、神戸大会を除くすべての大会で採点結果非公表。審査員の肩書に至っては、テレビ局支局長・新聞社支局長・作家・箏曲演奏家・ギタリスト・民謡愛好家などなど、果たして正当な評価が下せるのかきわめて疑問が残る面々が名前を連ねており、これが果たして津軽三味線の大会と呼べるのか、多方面で不満がくすぶっている。しかし表だっての批判はなされないところが、この業界の一側面を端的に表していると言えよう。 現在、いわゆる大御所の先生方が審査員を占める大会は、日比谷・大阪の2大会だけだが、この2大会すら採点基準や採点結果の公表を怠っている。 欧州クラシック音楽のコンクール等と比較すれば、津軽三味線の大会がいかにお粗末で怪しいものかは一目瞭然である。かくも採点競技としての資格を失する大会では、どんな結果が出ようとも誰も納得できないのは当然で、毎年あちこちから「やっぱり裏があるのか」という声が聞こえてくる。まず実力ある優勝者が報われないのは嘆かわしいことだが、審査基準の明文化、採点結果の公表、そして誰もが納得しうる審査員の選出という、ごく当たり前のことすらできない大会に疑惑がつきまとうのは致し方ないだろう。全力で挑む出場者たちは、大会をよく選び、納得の出来る大会にだけ出場するべきだろう。変な審査で賞状を受け取っても意味はない。ボイコットこそが、粗悪な大会を駆逐する最大の手段である。 審査については各大会に独自のカラーがあり、大会により好まれる三味線と嫌われる三味線がはっきり分かれる。その上、大会同士でのいがみ合いや流派の力関係が審査に影響するとも言われる。このためか、別大会をそれぞれ制覇することは難しい。 開催が5大会に増えた現在、大会をまたいでの最多優勝記録は柴田雅人の4大会制覇。同一大会での優勝では、渋谷和生の弘前大会優勝4回が最多記録となっている。
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