路上演奏のこと。本来は英語で「street」、路を意味する言葉だが、三味線を含めた音楽業界では「ストリート演奏」を略して単に「ストリート」と言うのが慣例となっている。なぜ「路上」という言葉が出てこなかったのかは謎。 ストリートは、人前で演奏する最も手軽な手段。運と実力があれば投げ銭も入るため、各地でかなり多くの人たちがチャレンジしている。ギターやバンドと違い、津軽三味線は高年齢層にウケるため、投げ銭の単価が高く効率が良いのだ。しかも演奏する曲はじょんがらの曲弾きだけでオッケー。これだけ聞けば、こんなにおいしい話はないと誰もが思うだろう。 しかし、プロを目指す人にとって最適な手段とは言い難い。「舞台度胸をつけるため」としてストリートに出る人も多いが、ストリートでの度胸とステージでの度胸は別物。またストリートからステージの仕事に結びつくことはきわめて稀だし、たとえ結びついても思いっきりナメられる上ギャラは叩かれる。さらに、不特定多数の素人を相手にすることで、いわゆる「シロウト受け」する演奏に偏りがちな傾向も出てきてしまう。古典の世界から遠ざかってしまうのだ。現実に、ストリート演奏からのし上がっていった有名演奏家というのも、数えるほどしかいない。 それでもストリートに出たいと言うガッツな人は、しっかり先生につき、古典を学ぶことを忘れないようにしよう。また、ストリートにつきものの警察、ヤンキー、ヤーさんに対する覚悟も必要だ。 まあ、考えてみれば昔のボサマはみんなストリートミュージシャンだったわけで、そういう意味では原点回帰と言えるかもしれない。だからと言ってあまり考えすぎるのもどうかと思う。小遣い稼ぎくらいのスタンスでストリートに出るのが正解かもしれない。
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