津軽地方の民謡。「津軽あいや節」として、津軽五ツ物(五大民謡)のひとつに数えられている。時に三ツ物に加える人もあるが、これは一般的な定義からすると誤り。 由来は、熊本県民謡「ハンヤ節」(『ハイヤ節』とも言う)にまで遡る。「ハンヤ」とは南風のこと。これが北前船に乗って各地の港に伝えられてゆき、佐渡を経て「佐渡おけさ」になり、津軽地方に至って鯵ヶ沢・青森・野辺地などの港へ入った。津軽地方で「ハンヤ」が「あいや」に変化し、「あいや節」と呼ばれるようになったとされる。入ってきた当時は流行歌として、酒席で盛んに唄われていたらしい。 当時のあいや節は「古調あいや節」「あいや旧節」として現在もわずかに残っているが、佐渡おけさに近い伴奏の素朴なものである。これに手を加えたのが梅田豊月で、伴奏も節回しも派手に明るくなった。現在、あいや節として広く演奏されているものは、この梅田豊月の手になるものである。 津軽あいや節には短調・長調の二種がある。現在の主流は明るい長調だが、竹山流においてはほとんど短調を演奏する。当然、唄の節も長調・短調で変わってくるのだが、昔は長調の伴奏で短調のメロディーを唄ったり、短調の伴奏で長調のメロディーを唄ったりと、今から考えると随分ちぐはぐなことをしている。洋楽の音感を持っている者には正直気持ち悪いのだが、それはそれで間違いではない。 唄い手では山田ゆり子が有名。かつて、「ゆり子のあいやか、あいやのゆり子か」と言われたほどの名手である。一度は聴いておくべきだろう。
【三ツ物】 →関連事項 【五ツ物】 →関連事項 |